著者の長谷川ちえさんはエッセイストであり、2016年春まで東京・蔵前で「in-kyo」という雑貨と器のお店を営んでいました。福島県に三春町に移住し、その町でふたたび「in-kyo」をはじめて6年目になります。この本は三春という町で出会った人や自然、大切にしたいことがらを立春から大寒までの二十四節気を感じながら綴ったエッセイ集です。
絵は人や繋がりを細やかに描く素描家 shunshun さん。ちえさんの言葉と響き合うように三春の四季や暮らしをうつくしく、そして愉しく描いています。編集は永井宏さんの『愉快のしるし』を出版された信陽堂編集室の丹治史彦さんと井上美佳さんです。
ちえさんに出会ったのは永井宏さんが関西でワークショップをはじめた頃だったので、もう二十年も前になります。最後にお会いしたのがいつだったのかもう思い出せませんが、「三春タイムズ」を読んでいて、ちえさんが驚いたり、うれしさにあふれたり、懐かしんだり、大切にしたいと胸に刻んだり、いくつもの感情と表情が、わたしの記憶に残る声とともにひびきました。読みすすめる文字の中にはちえさんが生きていて、まだ見ぬ福島の三春の土地にいるような気持ちになりました。いつか三春に行きたい。その時にはきっと「なつかしい」とつぶやく自分がいるだろう。読み終えた本を手にして思いました。
うつくしく、やさしく、あたたかく、そして人や季節を感じる本。自身の四季や暮らしをも大切にしたいと感じる本。たくさんの方に読んでいただきたい本です。
- 編集:
- 信陽堂編集室(丹治史彦・井上美佳)
- 造本装幀:
- サイトヲヒデユキ(書肆サイコロ)
- 校正:
- 猪熊良子
- サイズ:
- 四六変形判 仮フランス上製 216ページ
- ISBN:
- 978-4-910387-01-7 C0095
長谷川ちえ Chie Hasegawa/文永く使いたい器と生活道具の店〈in-kyo〉店主、エッセイスト
2007年、東京・蔵前のアノニマ・スタジオの一角にて店を始め、商品の販売のみならず展示とワークショップ、試食会などを組み合わせて作家と作り出されるものの魅力を伝えてきた。
2016年、福島県三春町への転居にともない店も移転、現在にいたる。
著書に『おいしいコーヒーをいれるために』(メディアファクトリー)、『ものづきあい』『器と暮らす』(ともにアノニマ・スタジオ)、『まよいながら、ゆれながら』(mille books)、『春夏秋冬のたしなみごと』(PHP研究所)、『むだを省く 暮らしのものさし』(朝日新聞出版)がある。
素描家 shunshun/絵高知生まれ、東京育ち。大学で建築を学び、建築設計の仕事を経て、絵の道へ。2012年春に千葉から広島へ移住。
書籍・広告のイラストレーションのほか、全国各地で個展も開催。
1本の極細ペンが生みだすフリーハンドの線が写しとった世界には独特の広がりと温かみがあり、高く評価されている。画集『drawings ?』、『DRAWINGS ?』や、素描集『主の糸三十六の素描の旅』、『二十四節気暦』のカレンダーなどを、すべて一人で企画・意匠・制作している。
信陽堂 Shinyodo Edit Brico丹治史彦と井上美佳により2010年信陽堂編集室としてスタート、書籍、冊子などの編集、制 作を中心に活動。2019年には『永井宏散文集 サンライト』(夏葉社)を編集した。 2012年より「たねやグループ」(滋賀県近江八幡市)の広報誌「La Collina/ラ コリーナ」の クリエイティブディレクションを担当。東日本震災後には地元有志とともに「石巻 まちの本 棚」を立ち上げ、活動をサポートしている。また、自社スペース「信陽堂アトリエ」にて記 録映画の上映会や各種ワークショップなども企画運営している。 2020年には出版社としての活動も始動、その1冊目が『愉快のしるし』となる。 丹治は在籍したリブロポート、メディアファクトリー、アノニマ・スタジオでそれぞれ永井 宏さんの書籍を編集してきた。
信陽堂HP