庭とその先への眼差し。
フランスの中南部、オーベルニュ地方にあるアーランという小さな町にある一軒家の庭を2006年から2012年までの6年間かけて撮影した写真集。庭の写真集ときくと綺麗に整った様子を想像するのですが、大塚さんが見つめた庭は、生まれ、成長し、朽ちて、絶える、「庭」ということに限定せず「自然」「生きているもの」をとらえているように感じました。この写真集には人物はうつっていません。動物は猫と鶏だけ。それでも人を感じるのはレンズを通して何かを思い、目の前のものを記そうとする大塚さんという人がいるからかもしれません。それはとても静かで、興奮しているでもなく、悲しんでいるでもなく、淡々と見つめている。思いはあっても、抑揚のないまなざしから伝えられるものは静かな絵画のようです。だからこそ、見る人が記憶に重ね、想像し、気持ちを巡らせることができるように思います。
6年という年月を季節にわけているので、頁をめくりながら四季を通して訪ねたような気持ちになります。「庭はなぜ要るのか」タイトルとなっている問いかけは、写真集をひらいて、この庭に訪れてから答えを出してみてください。時間をかけてつくられた本です。時間をかけて答えを思い描いていただきたいです。
- 発行日:
- 2013年6月9日 第一刷
- 写真:
- 大塚日出樹
- 翻訳:
- MagaliNosaka
- デザイン:
- 大塚千佳子
- ページ数:
- 112ページ
- サイズ:
- W204×H260A4変形
- 発行:
- GoodGrif
- 印刷:
- 吉原印刷株式会社