西尾さんの本を読むと西尾さんという人を知っていても、知らなくても、歩いている場所や眺めている景色が見えてきます。丁寧に日々を過ごし、そして感じたことを大切に言葉で描いているからの心地好さがあらわれています。

西尾さんが手作りの冊子でつづってきた言葉をブックロアから出版したこの詩集の初版本は、私事ですが、結婚してすぐの一冊目。夫婦ふたりで表紙と帯をかける作業を徹夜で行いました。なぜか、あの時、店主はマドレーヌを焼いて、それを食べながら、ふたり黙々と手を動かし、朝方まで映画を三本ぐらい観たように思います。でも、何を観たのかは、ぼんやりとしか覚えていません。ただ、私にとっての「朝のはじまり」を語る際には、夫婦で歩きだす始まりの本だったという記憶がよみがえります。