シャムアで半年間行っていた永井さんのものづくりのワークショップが終わった際に、私を含め大阪で参加していた人たちは「これからも来てほしい」と永井さんにお願いしました。「じゃ、これからは文章のワークショップをはじめるから」と言って永井さんは来てくださったのですが、最初のメンバーで参加したのは私ともうひとり。そして何年も続けたのは私だけ。みんな文章を書くのは恥ずかしいし、難しそうだからできないという理由でした。私も文章や詩を書くことに興味があったわけではなかったのですが、永井さんが言われるように自分の言葉は自分にしか書くことができない、そして文章を書くことで自分自身に向き合い、考えを整理することが大切になってくる。その言葉がやっていくうちにわかるようになりました。

月に一回、永井さんは関西に来てくださいました。最初は、書いて、読んでが愉しかったのも、2年、3年と経って自分の癖ができてしまうと、どんな文章も同じようなハタオ節になってしまいます。そのため、永井さんにおこられるわけではないのですが「ながいんだから」と言って、長く通っているのに上手くならないという遠回しの喝をいただきます。その癖から抜け出せない私は行きたくないなと思いつつシャムアの螺旋階段をのぼったことが何度もあります。それでも、永井さんが言うように文章を書くことが自分にとって好いことであるというのは感じていましたし、続けることの大切さも根付いていました。とうことで永井さんに見せずに個展のために書いていた言葉がいくつかあって、そのひとつが「ボタンとリボン」に載せていただいた『雨の唄』でした。

永井さんに「詩の雑誌をつくるから、いくつか書いたものを送ってよ」と言われました。私の他にもたくさんの人に声をかけていたので、自分の文章が載るなんてまったく思っていませんでした。それが、ある日、星ヶ丘からの帰りだったか、心斎橋からの帰りの駅のホームだったか、電車の音でよくきこえなかったのですが「あれ、おもしろいね」と永井さんのひと言。なんのことを言ったのかわからなかったけど言葉を合わせて「そうですか」なんて軽く返事をしたのを覚えています。それが私の書いた『雨の唄』のことだったというのがわかったのは、少し後のことでした。

永井さんはギャラリーに携わっていたり、日本各地で展示やワークショップを行っていたり、たくさんの方を知っておられました。「ボタンとリボン」は多くの人との出会いや、その人が行い続けている活動を確かなかたちにまとめておきたいという思いでつくられた本です。載っている方は皆等身大のそのままの言葉を綴っています。だからこそ、この本を読んだ方は気持ちの何処かにふれるものがあるような気がします。永井さんに出会った頃の私のように、何かをしてみたい、自分に何ができるのだろうかという思いを持っている方にもぜひ読んでいただきたい。永井さんが教えてくださったことが言葉となってたくさんつまっている本。ながく、ながく、時間をかけてでも伝えていきたい大切な一冊です。